夫へ伝言
何故だろう、今日は深酒だ。
いけないと知っている。
実はそんなに飲みたくなかったのに。
夫と大して楽しくもない話をする。
大して毒にも薬にもならない話をする。
馬鹿みたいに。
しかし、実は、ぐいぐいと私を責めていたんだ。
私、傷ついている。
そして、夫を失うのが怖くて仕方のない自分に、気づく。
夫はエレベーターで会った同僚の独身女性と話をしたという。
きっと美しい人だろう。
ピアノを習っているのだそうだ、ああ、意識が高いこと。
きっと夫の好みの女性だろう。
楽しそうにエレベーターでの中でした会話の話をする。
とても無邪気に。
おっと、それは、罪だよ・・・。
私のジェラシーでもないな、あきらめのような洪水がどーっと、
境界を越えてきた。
私は残りの命のカウントダウンがかかっている状態だから、
いくらでも、夫ののち添えを、なんて考えている。
でも、悲しくて、勝手にしてくれ、って気になる、のが正直なところだ。
そんな女性良いじゃない、とだけ言っておいた。
それ以上は、言わない。言えない。
私の死んだあと、彼は、一人で生きていけるわけない。
私で鍛えられているから、きっと、のち添えの方とも、うまくやるんじゃなかろうか。
知らんけれどもね。
息子には、息子の人生を、尊重してあげて、お願いだから、とだけ伝えたい。
命の伝言だ。